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 かねてより健康な生活の基本は「快食、快眠、快便」であると言われています。今回は日常生活ではなかなか話題にしにくい快便について考えてみましょう。

 私たちが食べた物は食道・胃・十二指腸・小腸へと進んで消化吸収され、大腸を通る間に徐々に水分が抜けて形のある便になります。便は直腸の手前にあるS状結腸にしばらくとどまり、大蠕動という腸の強い動きで直腸に移動します。この大蠕動は1日に1〜3回ほど起きますが、一般的に胃に食物が入ると生じるもので「胃・結腸反射」と呼ばれています。
 直腸に便が移動すると直腸の内圧が高まって神経刺激が脳の排便中枢に届いて便意を生じ、肛門を閉めている筋肉を緩めて排便を促します。この動きを「排便反射」といいます。
 これらのメカニズムは自律神経がコントロールをしているため、自分の意思で動かすことはできません。自律神経はストレスや不規則な生活、偏った食生活等で簡単に乱れてしまい、便秘や下痢などを引き起こすためそれらをなるべく避けて自律神経を整えることが快便への第一歩です。
 「胃・結腸反射」は空っぽになった状態の胃に食べ物が入ると起きやすいため、朝起きたらコップ1〜2杯の水や白湯を飲み、その後朝食をとることで反射を促しましょう。そして便意が来たらすぐにトイレに行くのがポイントです。
 便意が無いのにトイレでいきみ、無理に便を出そうとする方がいますが、これはお勧めできません。何故なら自律神経に逆らっても快便は得られませんし、いきむことで肛門に負担がかかって出血したり痔になる怖れがあるからです。
 逆に便意が来てもトイレに行くのを我慢する事を続けると反射が起きにくくなってしまいます。反射を促し便意を受けとめ適切に行動することが大事です。
 温水洗浄便座いわゆるウォシュレットを普段から使っている方も多いと思いますが、気を付けていただきたい点があります。
 まずシャワーの勢いは極力弱めで使用しましょう。肛門の粘膜は薄いため、強い水圧をかけると切れてしまうことがあります。また、強い水流で肛門を刺激して排便を促すことを続けるとシャワーの刺激無しでは排便が出来なくなってしまう事があるので要注意です。 そして一番問題となるのが自分の便の色が判らない人が増えている事です。 便は様々な病気の存在を私たちに伝えてくれます。

黒い便

上部消化管出血の可能性

➤胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌の疑い

赤黒い便

 大腸などの下部消化管出血を考える

腹痛あり➤感染性腸炎、虚血性腸炎の疑い
腹痛なし➤大腸憩室出血、大腸癌の疑い

鮮血便or便の表面に血が付く

 直腸や肛門からの出血(痔、直腸癌の疑い)


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(便秘の原因と対策 健康情報サイト元気Webより)

 採血検査で貧血がみられたときに一番にチェックしなければいけないのは消化管からの出血がないかどうかです。自分の便の色を伝えていただければより早く病気を見つけることができます。 便は文字どおりあなたに送られる身体からのお便りです。 日々、自分の便を管理・チェックし、より健康な体を目指しましょう。

医師のご紹介

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 内科(消化器)三沢慶子 医師

 所属学会・受賞歴

 ●日本内科学会 総合内科専門医
 ●日本消化器病学会 専門医
 ●日本消化器内視鏡学会
 ●日本肝臓学会