「 一年の計は元旦にあり」 

 皆さんは、今年の一年どのような計画をたてましたか? 昔から人々の間で言い伝えられてきた「生活の知恵」や「ありがたい教え」を簡潔な言葉で表現したものが“ことわざ”です。
 ところで、最近、「糖尿病」という名称に不快感を抱く方が多いことが判明し、日本糖尿病協会・日本糖尿病学会は新たな病名を検討しています。ただ、病名が変わっても病気の本質や治療法まで変わるものではありません。糖尿病に対する多くの薬が開発されていますが、それでもなお食事療法・運動療法(適切な食事と運動)が糖尿病治療の主役です。
 そこで、糖尿病治療のヒントになることわざを紹介し今後の糖尿病治療に役立てていただければ幸いです。

「彼を知り己を知れば百戦殆からず」

 突然ですが、今流行している新型コロナウイルス感染症も、病態が解明されるにつれワクチンや治療薬も開発され発症当時ほど怖い病気ではなくなってきています。
  糖尿病は、血糖値(血液中の糖分の値)が慢性的に上昇した状態であり自覚症状はさほどありませんが、放置しておくと失明・人工透析・足の切断などの合併症に至ることが知られています。しかし、皆がそうなるわけではなく、血糖管理が上手くいっていない場合に合併症になりやすいことも解明されています。先に述べように、血糖管理を上手に行うのに適切な方法が食事療法であり運動療法なのです。糖尿病について正しい知識を学ぶことで過度な心配や不安もなくなりますし治療にも役立ちます。敵の実力を把握し自分自身のことをわきまえて戦えば勝つことができるのです。

「腹八分目に医者いらず」

 糖尿病にも薬がありますが、糖尿病の薬は “血糖値を低下させる薬であり治す薬ではない”のです。つまり、薬をいくら飲んでもそれ以上に食べれば血糖値は上がり病気が進行していきます。食事療法とは、自身に見合った適切な食事摂取量を守ることです。しかし、指示通り実行することは大変な場合もあるかもしれません。そのような場合、難しいことは考えず、腹八分目の食事にしてみましょう。そして、間食やジュース類は控え水分は水・お茶にする、これだけでも糖尿病はかなり改善するでしょう。健康のためには、満腹になるまで食べないことが重要です。

「アノネ  がんばらなくてもいいからさ  具体的にうごくことだね」 

 詩人・書家である相田みつをさんの言葉です。何をしようか考えてばかりいて運動(行動)しなければ何も変わりません。あれこれ考えず、とにかくまず自分ができることから行動してみましょう。運動療法とは簡単に言えば動くことです。普段行っている洗濯・掃除なども運動と同じです。寒い冬でも家の中なら、立ったり座ったりとか、テレビ体操とか、腰の痛い人は腰痛体操とか、動くことはできます。体を動かすことで血糖値も低下し、ストレス解消にもつながります。

「継続は力なり」

 食事・運動療法は、テスト前の一夜漬けのように一時だけ頑張っても効果は乏しく、無理して頑張りすぎても長続きしません。日々自分ができることを無理せずこつこつと続けることが重要です。たとえ、小さなことであっても、日々の行いがいずれ大きな効果となって表れてきます。

転ばぬ先の杖

糖尿病治療は、今ある症状を改善するのではなく、将来起こり得る失明や透析などの合併症を防ぐことが目的です。将来、安心して過ごせるように普段から気を付けたいものですね。

「笑う門には福来る」 

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 “毎日笑顔で楽しく過ごす”、これがもっとも伝えたいことわざです。何かとストレスの多い世の中ですが、くよくよいらいらして生活しても体にいいことはありません。一方、笑うことは血糖を下げる・免疫機能を上げる効果があります。いつも明るく笑顔でいればおのずと幸せがやってきます。健康的な人生を送るために“楽しく食べて楽しく動く”を続けましょう。 今年も良き一年になりますよう皆さん大いに笑って過ごしましょう。

 

 

 

  医師のご紹介

写真1  内科(糖尿病)平田昭彦 医師

  所属学会・受賞歴

  ●日本糖尿病学会 専門医
  ●日本内科学会 認定医