武井寛理事長

  新型コロナ感染症によって、なかなか先が見通せない今日この頃ですが、季節は着実に巡ってきます。みゆき会がある山形県の内陸地域でも、桜の蕾が膨らんできています。多くの方が、希望と期待で胸を膨らませる4月を迎えました。

 さて、SDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)という言葉を耳にすることが増えました。地球温暖化などを原因とした環境破壊や不平等な格差の世界的な広がりを受けて、「このままではみんな幸せじゃない。次の世代はもっと不幸になってしまう。」と多くの人々が気付き始めた結果だと思います。産業革命後の、地球の資源を消費して経済発展を図ると言うモデルの限界点が見えつつあるということでしょう。また、そういった経済活動の効率を高めるための「都市」というシステムの脆弱性も、新型コロナ感染症によって図らずも露呈されたと言って良いかと思います。あえて批判を恐れずに言うならば、“人間らしい生活”とは、過密にならない、豊かな自然に囲まれた地方にこそあると信じています。日本の場合、食料自給率を今よりも上げていく必要がありますが、それは都会ではできません。化石燃料に頼らない、水力・風力・太陽光といった再生可能エネルギーも自然豊かな地方にこそ、ふんだんにあるものです。現代のような混沌とした世界にあって、勤勉や和の精神といった日本人の伝統的な資質が見直されていますが、このような資質は都市や都会で形作られたものではありません。自然豊かな農村や漁村、つまり地方の共同体生活の中で育まれ、かつ培われてきたものであることに疑う余地はありません。自然豊かな環境の中で、『生まれ育った地域を大事にし、家族を大事にしながら生きていく』、そういった生活を時代や様式が変わっても子々孫々の世代にまで持続させることが、SDGsの本来的な意味ではないかと考えています。

 医療・介護を主たる業務とする当法人にとって、大事にしなければならない持続性とは、利用していただく皆様が住まう周辺地域の持続性、そして当法人自身の持続性にほかなりません。このことを明確にするため、今年度から法人の理念を改変致しました。新しい理念は、「みゆき会は各世代への『専門的医療サービス』とニーズに即した『高度な介護サービス』によって地域の持続的な発展を支えます」というものです。新たな理念をもって、「当法人は周辺地域を医療・介護で支えるインフラです!」と高らかに宣言致します。インフラとは道路や橋、はたまた通信網など、生活に欠かせない社会基盤のことです。そして、質の悪いインフラしかない地域に住みたい人は多くありません。効率的かつ高品質で、使い勝手の良いインフラが整った地域にこそ人は住みたいものです。理念を改変するとともに、みゆき会という社会医療法人を、更に使い勝手が良く、効率的で高品質な、時代のニーズに即したインフラにできるよう引き続き努力して参ります。

 「地域包括ケアシステム」が謳われて久しくなりましたが、これこそ国が提唱し、日本の医療・介護システムを持続可能にしていくための切り札です。これは、地域の人々がその健康を守られ、同時に健やかな老いを生きていきために、医療や介護が必要になっても住み慣れた地域で適切なケアを、最適な場所と形で受けられるようにと考え出されたシステムです。この考え方は、設立以来みゆき会が模索してきた方向性と合致します。このため、みゆき会病院ではこれまで各科・各疾患のスペシャリストを取り揃えるばかりでなく、地域包括ケア病棟を導入してきました。介護老人保健施設みゆきの丘は、今年度から超強化型の施設となります。南館クリニックには前小国町立病院長・阿部吉弘医師が着任しました。阿部医師はこれまで、小国町の地域包括ケアシステムを中心となって統括してきた専門家です。このように、当法人の持つ病院・介護施設、訪問診療/看護/リハビリテーションに加えて、みゆき会グループであるクリニック、介護老人福祉施設、ケアハイムといった布陣のネットワークによって、地域包括ケアシステムのより一層の効率化、高品質化を図って参ります。いわば「超強化型の地域包括ケアシステム」によって、地域の人々が守られれば、それは暮らしの安心・安全につながって、地域の持続的な発展に大きく貢献できることでしょう。それによって、当法人自身の持続性も保たれるはずです。少子高齢化が進んでいるこの地域の持続的な発展は、日本全体の持続的な発展を意味し、ひいてはそれが最先端のモデルとして世界の持続可能な発展にも寄与しうるものと考えます。新たな理念とともに、今年度の新たなスタートを切った社会医療法人みゆき会を、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

 

2021年  4月 1日

社会医療法人みゆき会

 理事長 武井 寛