写真3  1997年から99年にかけてアメリカ合衆国のカリフォルニア大学サンディエゴ校に留学していました。バブル経済が弾けた後の時期でしたが、彼の地では日本の高度成長時代の印象がまだ残されており、日本製品の優秀さにも定評がありました。日常生活では差別を受ける場面もあり、なかなかにタフな約2年間でしたが、そんな中家族で取り組んだ柔道(Judo)に大いに助けられました。また日本のアニメは現地でも大人気で、持っていったキャラクターのカードに高い値がついたと子供たちから聞きました。その時の経験から、日本が国際的に存在感を示し続けるためには、技術革新、スポーツ、教育そして伝統と文化を大切にすることではないかと考えました。しかし、その後も日本は失われた30年に沈み、賃金も、モノの値段も上がらず、例えばビッグマック1個の値段がスイスの3分の1近くにまで低くなってしまいました。誰のせいか?政府や財務省の政策が直接の原因としても、それはそのまま私たち自身がその責を負うべきでしょう。  

 世界が混沌としています。第二次世界大戦後の、また冷戦後の比較的落ち着いていた時代が終わり、次なる安定を模索する産みの苦しみの時代に入ったものと思われます。四半世紀前に私が過ごしたアメリカ合衆国も、昨年の大統領選挙の結果次第では内戦が起きるのではないか?と真剣に心配されたほど分断が進んでいます。トランプ2.0では、テスラ社やスペースX社を配下に収めるイーロン・マスク氏が政府効率化省(DOGE)のトップに任命され、アメリカ政府と政治の無駄を排するために辣腕を振るっていることはみなさんご承知の通りです。分断がさらに深まるのでは、と心配されるところでもありますが、このマスク氏、任命されてすぐの2024年11月24日、自らが運営しているX(旧Twitter)に、日本語で一言「侘び寂び」とポストしたことをご存知でしょうか?またApple社の創業者である故スティーブ・ジョブズ氏は若い頃から曹洞宗に傾倒し、「色即是空・空即是色」という概念を重視して、Macやiphoneのデザインに「間」や「余白の美」という考えを色濃く反映させていたということも周知の事実です。ポップカルチャーの分野では、日本発のボーカロイドが世界中の若者を熱狂させていると先日NHKスペシャルで放送されていました。世界の至る所で日本の伝統・文化が重要視されています。  

 ところで、この日本の文化と伝統は日本の気候風土、そして市井の人々の暮らしの中から紡ぎ出されたものであることに疑う余地はありません。人工的なモノの中に「侘び寂び」を見つけることは困難です。全てのものは無常であり、執着しないことが大切(=色即是空・空即是色)という概念は、秋に枯れ、冬は雪に覆われても春には新たに芽吹く草木をはじめとする、四季に移りゆく自然を身近に感じられるからこそ生み出されるものと考えます。日本には、そして世界には、日本の自然、そしてそこから生み出される日本的な思想・価値観が必要とされていると思えてなりません。米の値段が高騰している昨今、食糧安全保障という観点からも、地方がもっと活躍しなければならないと感じます。1972年に「地方の時代(田中角栄)」、2014年には「地方創生(安倍晋三)」と言われ様々な施策が行われて来ました。しかし、残念ながらどちらかといえば「地方消滅(増田寛也氏)」に近づいているのが現実です。このままでは日本が消滅してしまうと、かのマスク氏も心配しています。日本の人口が減少し地方が衰退してしまえば、今は大輪の花を咲かせている日本文化もその根の部分が枯れてしまい、真の意味での日本が失われてしまいかねません。それは世界にとっても大きな損失です。山形県を、日本の地方を守り、つまりは地方に住まう人々を医療・介護という面から支え、地域のそして日本の持続的な発展に少しでも寄与したい、そういう思いでみゆき会は運営されています。このような考えに少しでもご賛同いただける方は是非当法人をご利用ください。また機会があれば一緒に仕事をしていきましょう。
 今年度も、ご指導・ご鞭撻いただきますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

2025年3月21日 記

 

社会医療法人みゆき会

理事長 武井 寛