ノーマライゼーションと地域共生社会

 「ノーマライゼーション」という言葉をご存じでしょうか?障がいをお持ちの方に、どんな援助をどのようにすれば、普通に人と同じように生活できるのかを考えて実行していくことです。「ケアマネジメント」という言葉はどうでしょう?ケアマネジャーをケアマネと略したり、ケアマネさんはよく耳にしますね。ケアマネジメントとは、障がいを持つ人が地域で暮らすために、医療・福祉・住宅・職業などの問題をひとつの窓口で対応していく手法で、これを行ってくれる人がケアマネさんです。これらは、地域包括ケアシステムを作り上げていく時に非常に重要なことです。
 例えば、元気でいたおばあちゃんがある日転んで足の骨を骨折したとしましょう。まず医療が必要になります。入院、手術が行われます。その後リハビリをして、なんとか歩けるようになり退院となります。医療は、病気やケガでの状態で治療法が大筋で決まっています。しかし、日常の生活に戻っていくためには個人個人で異なるいろいろな課題が出てきます。その課題について、ケアマネさんはノーマライゼーションの視点で、介護保険サービスや福祉制度を利用してその人に合ったケアを計画します(ケアプラン)。
 実際のケアの現場では、サービスを受ける人の頑張りや意欲(自助)、ご家族や近隣の方の見守りや支えなど、(互助)が基本的に大事です。そのうえで、介護保険サービスや福祉制度(共助、公助)が適切に供給されていくことで地域包括ケアがしっかり機能してきます。ノーマライゼーションの視点で、自助、互助、共助、公助がうまくかみ合えば、地域で暮らす住民の方々がかかえる介護以外の様々な問題に対しても、解決の糸口になる可能性もあります。
 高齢や障がいを持っても、偏見や差別を無くし、生まれ育った地域の中で自分らしく暮らそうというノーマライゼーションの理念や地域包括ケアシステムの構築は、国が提唱する「地域共生社会」への第一歩に繋がっています。

阿部Dr

 

 

南館クリニック院長
ライフケアセンター南館センター長

阿部吉弘