現在の日本は少子高齢社会です。日本全体の人口は少しずつ減っていきますが、65歳以上の高齢者の人口はしばらく増えていくことが予想されています。医学の進歩によって、病気を患っていても元気に生活する高齢者は増えていますが、歳を重ねるごとに「老い」による生活への影響は大きくなっていきます。介護保険の利用状況をみると、概ね80歳未満の高齢者は介護保険とは無縁のお元気な高齢者ですが、80歳以上では介護保険利用者が増えていき、90歳以上の方では約8割の方が介護保険を利用しています。

 WHOは、「健康とは、肉体的、精神的、及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病または病弱の存在しないことではない」と定義しています。高齢期の健康に対する調査をみると、病気を患っている方、薬を飲んで治療中の方でも、健康と感じている方が多くいらっしゃいます。肉体的には病気があっても、精神的及び社会的にには良好という感覚があるのでしょう。旅行や外食などで社会と関わり、自分で日々の意思決定などを通じて生活が充実していることが重要と思います。老いても健康に暮らせる地域を目指す仕組みが地域包括ケアです。地域の高齢者の多くは、病気の治療や肉体的症状の緩和のためのお薬など、医療との関りがあります。

 地域包括ケアでの医療は、病気治療のみならず生活を支える「治し支える医療」です。その中でも、通院が困難になった方々への在宅医療は大きな役割を担っています。老いの終着である終末期においても、住み慣れた自宅で最期をと考えている方や、ご家族を支援する在宅医療の果たす役割は非常に重要なものです。地域包括ケアが充実して、歳を重ねて「老い」の影響を受けながらも、健康を少しでも実感できるような地域であってほしいと思います。

阿部Dr

 

 

南館クリニック院長
ライフケアセンター南館センター長

阿部吉弘

 

 

 

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