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 本年7月からみゆき会病院に赴任いたしました鈴木博人です。さて皆さま、麻酔科もしくは麻酔科医とは何をしている医師でしょうか?最近は少しずつ認知されてきているとは思いますが、手術を受けることにならなければお会いになる機会もあまりないのが実情かと思います。ここでは麻酔科医が何をしている医師なのかお話したいと思います。
 実は世界で初めて全身麻酔で手術を行ったのは花岡青洲という日本人でした(1804年)。つまり麻酔の元祖は日本、ということになりますが、残念ながら麻酔を専門とする医師が誕生するのは欧米よりも後のことになります。第二次世界大戦の終結後、先進的な西洋医学とともに現代的な麻酔法も我が国に紹介され広まっていきましたが、それでもしばらくの間は外科医の中で麻酔係を決め麻酔を行う各科麻酔(自科麻酔)がほとんどでした。しかし彼らはあくまでも専門は外科医であり、全身の知識が必要な麻酔を専門外の医師が行えるほど簡単なものではなかったのです。その後多くの苦労・経験とともに、手術を安全に行うためには専門に行う医師が必要であるという認識が高まり、麻酔専門医が誕生しました。
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 麻酔科医の仕事とは患者さんをただ眠らせることに非ず、手術中・周術期の患者さんの体調管理の全てを行います。もちろん、「眠らせる」ことすら簡単なことではありません。「眠る」といってもメスで切ったり針で縫ったりしても気づかないほどの眠りなので、血圧は下がり、心拍は遅くなり、呼吸は止まります。御高齢の方・思い持病を持っている方ほど変化が大きくなります。そのままでは命に関わりますので食い止める必要がありますが、血圧・心拍をコントロールするには当然循環器の知識が必要ですし、呼吸をさせる(人工呼吸)ためには呼吸器の知識と共に喉に管を通す(気管挿管)技術が必要となります。また手術中の体液・電解質の管理、出血に対する補充なども行います。さらに、患者さんは寝ているので手術中に痛みなどは感じませんが、体自体は大きなストレスを受けています。そのストレス自体でも体調を崩しますし、それにより持病が悪化したりします。例えば心臓病を持つ人は不整脈や心臓発作を起こし易くなり、肺や腎臓の機能が低下している人が手術によりさらに悪化する可能性もあります。それらを予防し、発作などが起こった時には治療するのも麻酔科医です。そして手術が終わったらその時間に合わせて患者さんを目覚めさせ、何事もなかったかのようにすっきりと病室にお帰りいただきます。それを毎日様々な状態の患者さんに行いますので、幅広い知識と経験・高い技術が必要となります。
 手術室以外でも麻酔科医は活躍しています。最近COVID-19との関連でメディアでもICU(集中治療室)や集中治療医について取り上げられましたが、日本では集中治療医の多くは麻酔科出身です。重症患者は一つではなく複数の臓器に問題があること多く、全身の臓器の知識が必要です。また、ICUでの人工呼吸・鎮静は麻酔と類似しているところがあり、麻酔科に必要な知識・技術と共通するところが多いのです。つまり麻酔科医はその病院の最も重要な場所の一つである手術室や集中治療室で活躍しており、その病院の守護神とも言えるかと思います。
 さて私はこのみゆき会病院において、これまで以上に皆様に安心・安全・快適な手術、また快適な入院生活を送っていただけるように尽力いたしますので今後ともよろしくお願い致します。

医師のご紹介

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麻酔科 鈴木博人 医師

(みゆき会病院 副院長)


所属学会・受賞歴

●日本専門医機構 麻酔科専門医
●日本麻酔科学会 指導医
●日本心臓血管麻酔学会 専門医
●日本集中治療医学会 専門医
●日本救急医学会
●日本区域麻酔学会