「腰部脊柱管狭窄症」「脊椎術後疼痛症候群」に対する新しい治療法
硬膜外腔癒着剥離術は、慢性的な腰痛や坐骨神経痛の原因となる腰椎硬膜外周囲の癒着を取り除くための手術です。この手術は、従来の治療法で効果が見られない、大きな手術が受けられない、または大きな手術は希望しない場合などに適用されます。
硬膜外腔癒着剥離の方法として、経仙骨的脊柱管形成術(TSCP)は、仙骨裂孔から3mm以下の細いカテーテルを脊柱管に挿入、硬膜外の癒着剥離、炎症物質の洗浄、薬物による疼痛緩和を行う手技です。主に麻酔科領域で、2000年から先進医療として全国12施設のみで行われてきましたが、2018年に保険適応となり、一定の条件を満たした施設で施行可能になりました。 筆者は2019年8月から同手術を施行しております。
手術で使用する「硬膜外カテーテル」
手術の概要
硬膜外腔癒着剥離術の適応となる患者さま ・ 腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなどの腰椎疾患 ・ 原因がはっきりしない慢性の腰痛、坐骨神経痛 ・ 脊椎手術後も疼痛が残ってしまっている脊椎手術後疼痛症候群など
目的
腰椎硬膜外周囲の癒着を剥がすことで、神経の癒着、炎症を軽減し、痛みを和らげます。
方法
当院では手術の前日に入院していただきます。 手術は局所麻酔で仙骨裂孔(しっぽの付け根のあたり)に局所麻酔の注射をします。3mmほど切開して、カテーテルの通り道を作ります。そこにカテーテルを挿入して、傷んでいる硬膜外腔に薬剤を注入し、癒着を剥がします。
所要時間
通常、手術は20‐30分で終了します。
手術中のレントゲン写真(側面) |
(正面) |
術後
創部は縫合の必要はありません 終了後はすぐに歩行、食事可能です。 一晩様子を見て問題なければ、退院可能ですが、1週間ほどリハビリをして帰ることも可能です。
期待される効果
・ 痛みの軽減
・ 日常生活の質の向上 平均60%程度の改善が得られます。 根治的な治療と違い、徐々に痛み・しびれが戻ることが多く、6か月から1年の間隔をあけて、繰り返し受けている患者さんも多数いらっしゃいます。
手術後のケア
・手術後は1週間ほど創部を汚さないように注意する必要があります。医師の指示に従ってください。
・ 定期的に外来通院していただくことが推奨されます。
注意点
・ 手術には合併症(出血や感染など)のリスクが伴うことがあります。
・ 効果は個人によって異なります。
根治的な手術を望まれる方というよりは、大きな手術までは希望しないが、飲み薬だけでは効果が低い方、年齢・体力的に大きな手術は困難な方、 腰の手術をして検査結果もよいのに痛み、しびれが残っている方、腰痛、下肢痛、しびれで困っているのに、原因がわからない方にお勧めです。
医師のご紹介
整形外科(脊椎・脊髄):千葉 克司 医師
<所属学会・受賞歴>
●日本整形外科学会 専門医
脊椎内視鏡手術技術認定3種
●日本脊椎脊髄病学会 指導医
●日本低侵襲脊椎外科学会
●日本MIST学会
●東北整形災害外科学会
●東北脊椎外科研究会 令和4年度会長
●とうほく脊椎内視鏡研究会 幹事