2020年度を迎えて  ~新型コロナウイルス感染症に備える~

今年度は、4月より新たに27名の職員を迎えることができました。若安藤Dr
スタッフのフレッシュなパワーはみゆき会病院を明るく元気にし、医療
サービスの向上に寄与するものと期待します。診療部門では脳神経外科
の金城利彦先生を置賜総合病院からお招きし、回復期リハビリ病棟の充
実および脳神経外科外来が開設されました。さらに訪問看護ステーショ
ンについては、24時間対応としサービスの充実を図る予定です。今年度
も当院の理念である『専門的医療サービスと地域ニーズに即した各世代
へのトータルケアサービスの提供』を実践し、地域包括ケアシステムの
充実に邁進して参ります。                   

新型コロナウイルス ~これまでの経緯について~

さて、年末に中国武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 
は、世界経済の中国依存とグローバリゼーションの大波に乗って瞬く間に全世界へと拡散し、いわゆるパンデミックの状況を引き起こしています。日本は緊急事態宣言を全国に適応し、感染拡大をコントロールしようとしています。しかしながら政府の対応を振り返ると、当初から中国側への配慮、東京オリンピック延期調整、さらに経済の落ち込み予測への懸念などが先行したため、重要な感染拡大防止や医療破綻回避の対策が十分ではなかったと考えます。2003年のSARS(重症呼吸器症候群)の流行時、中国で約800名、2015年のMERS(中東呼吸器症候群)では韓国において院内感染に端を発し40名の死者を出しています。いずれも今回と同じコロナウイルスであり、それぞれの死亡率はSARS10%、MERS30%、および今回の新型コロナウイルス(COVID-19)では約2%です。中国、韓国や台湾などでは当時の経験をいかして、強力でシステマティックな感染対策介入を行なうことで効果を出しているように思われます。日本は2009年のパンデミックインフルエンザの流行においても諸外国と比べて、多数の死亡者を出すことなく過ごしてきました。結果的に新型感染症の流行に対する危機感が薄れていたと言わざるを得ず、現状の対策が後手後手になった印象です。

感染対策について ~当院での対策~

 今回のCOVID-19のポイントはいくつかありますが、まずは活動・移動可能な軽症/無症状感染者が存在することです。当初のクラスター対策だけではコントロールできなくなっている所以です。7~8割の人は感染しても風邪などの症状で済んでしまうため、知らないうちに次々と感染を拡大する可能性があり、結果として感染者が増えていきます。2割の方が肺炎になり、1割の方が重症で人工呼吸器が必要な状況となり、集中治療を要する方が増加し、医療現場として対応困難となります。いわゆる医療崩壊です。首都圏では危険水域に達しており、通常の救急診療にも影響が出ています。これまでの医療で助かっていた命を助けられなくなってしまいます。対策としては、世界中で叫ばれている『Stay home!家にいましょう』、『人から離れましょう』(社会的距離2m前後を保つ)の実践です。もう一つの大きな問題は院内感染、施設内感染です。高齢者や合併症を有する方の死亡率は高く、特に日本の病院、療養施設、福祉施設では細心の注意が必要になります。みゆき会においても緊急事態宣言を明言し、対策を強化しております。全職員、来院いただいた患者様、面会者の皆様へもマスク着用を義務づけています。また、患者様を院内感染から守るという前提で、特別な事情以外は面会禁止とさせていただいております。院内感染はなんとしてでも避けなければならないと考えます。皆様には大変ご不便をおかけしますが、ご理解とご協力をお願いいたします。

COVID-19に対しての、特効薬やワクチンはまだありません。現状できることは、新たな感染者を出さないために全ての人の行動変容、制限だけです。立ち話やお茶のみも避けて下さい。今後、対策が機能しなければ、この山形においても医療崩壊や院内・施設内感染が増加し多数の死者を招きます。対応が不十分な場合はやはり、重症者の病床が不足し、一般病院でも感染者の入院要請が出て結果的に悪いシナリオへ向かう懸念があります。全国的に軽症患者の収容施設を病院以外に設定するなど、新たなシステムを模索しています。保健所等行政の方々の負担が高まっていますが、役割分担や新たなリソースの導入など一連のシステムの中で、感染症の医療、経過観察の流れを作っていただき、それを継続しながら徐々に通常生活に戻ることができればと願います。日本は災害大国と言えます。大地震や豪雨災害などが現在の状況下に発災することに大きな懸念を感じます。それも含め想定し、対策を講じておかなければならないと考えます。今回のCOVID-19も自然災害(大災害)と捉えることができると思われます。最悪を想定しつつ、そうならないようにしっかりと準備することが必要です。災害時に叫ばれる言葉として、『自分の命、大切な人の命を守る行動』と言われますが、現在はまさしく『家にいましょう、人から離れましょう。』の実践が全員の命を守る行動です。

 収束へ向けて ~世界がワンチームとなって~

  私たち人類は、過去様々な困難を乗り越えてきました。ひとり一人が新型コロナウイルスを「良く知り」「自分の行動を変えていく」、そうすればこの難局は必ず好転していくと考えます。地域の皆様の努力と共に、みゆき会も闘って参ります。力を合わせて、現在の状況を共に乗り越えて行きましょう。

               

                                みゆき会病院 
                                病院長 安藤常浩