手、指、腕、肘、肩の様々な疾患・障害に対する様々な治療を行っています。痛みのある状態の手では日常生活に大きな障害が生じます。「痛くて手が使えない」「指が動かしにくい」「手がこわばる」などの症状のある方はご相談下さい。 

医師紹介

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  • 土田 浩之
    Hiroyuki Tsuchida

    診療部長(整形外科) 2階西病棟担当

    Message

    世界でいちばん治安がよいのは日本だそうです。その日本のなかで、もっとも治安が良い県の一つが山形県。世界でいちばん良い人たちが暮らす地域で生活し、仕事ができることを幸せと思っています。

  • 専門分野

    手の外科、内反足

    所属学会・受賞歴

    ●日本整形外科学会 指導医、専門医
    ●日本手外科学会 専門医

  • 土田Dr_1

主な疾患と治療

症状

手のしびれの原因で多いのは、首の椎間板障害、手根管症候群、それから肘部管症候群です。

ここでは女性に多い手根管症候群について説明します。しびれやジンジンするいたみの範囲は母指から薬指にかけて生じます。人間の手は明け方にわずかにむくむ特徴があるため、症状が強くなることがあり、このため起床時に手を振ると楽になります。

症状が進んだ場合には、母指の付け根の筋肉が弱くなることがあり、ボタンの掛け外しが思うようにいかないなどの支障が生じます。多いのは20代と50代以降の女性ですが、出産、更年期と関係があるとされています。また手首の骨折や関節リウマチに合併して生じることもあります。

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下図のように、手のひらには靭帯があり、その下には正中神経と指を曲げる腱がたくさん走行しています。この部分で慢性的な摩擦運動や内部圧力が高くなるために神経の症状が生じます。

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外来での簡単な診察と検査で診断は可能です。おおまかには手首を曲げたままで、しばらくすると症状が悪くなることです。

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ただ全員が陽性ではありませんし、軽症なのか重症かもわかりません。このため以下の3つの検査を行います。

 

検査

a)神経伝導速度:簡単な検査ですが正確です。皮膚の上から神経を刺激して、反応時間を計測し、神経障害部位を特定する検査です。

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b)知覚検査:これも簡単な検査ですが、国際的に標準化された方法で神経の障害範囲を特定し、感覚の鈍さを一目瞭然にします。

c)レントゲン検査:手根管内に石灰が溜まっている場合、また、いまでは少なくなりましたが骨が死んでしまうキーンベック病の有無などついて確認します。

 

治療

治療は軽症か重症という症状だけでは決まりません。患者さん自身が置かれている仕事や環境なども念頭にいれて行います。

しびれというのは、電気コードに例えれば、電線の周りをくるんでいるビニール皮膜に穴が空いて、漏電しているような状態に神経が置かれていると想像してください。皮膜の保護作用があるものとしてはビタミンB12が知られています。これは症状の進行を抑えることができます。

クスリよりも有効な治療として、スプリント療法をお勧めしています。先に述べたように手首を曲げていると9割の患者さんは症状が悪化します。例えば症状がもっとも悪くなりやすい就寝中に、このサポーターをつけて手首を曲がるのを防ぐだけでも朝のしびれは改善します。

数百人に行ってみて、スプリント(サポーター)の有効率は半分くらいですが、少なくとも症状の進行を防いでくれるでしょう。また後述する手術になった場合でも、このスプリントを使用しますのでムダになりません。

手術は局所麻酔でお話できる状態で約15分ほどです。手の大きさによりますが、切開は手のひらを中心約4-5cm行います。腕部にタニケット(強力な「血圧計」)を巻きつけて、一時的に手の血行を遮断して、ほぼ無血的に横手根靭帯(屈筋支帯)の切開を行います。正中神経の減圧、必要ならば剥離を行います。

多くの場合、当日入院にて手術室で行います。傷は細い糸で縫合し、その後1週間はスプリントを装着します。抜糸は2週間後に行います。遠方在住や高齢で通院困難な場合を除いて、手術翌日に退院となります。

手術後の一般的な回復について述べます。手術の翌日からなんらかの症状改善がある例が半分くらいです。しかし指先までの神経の回復速度は1日1ミリであり、指先のしびれが取れるのは約半年後のことが多いです。

これは神経の手術について一般的に言えることですが、正しい治療であっても全員が完全に良くなるわけではありません。なぜなら靭帯を緩めて、障害を受けた神経の回復を促す環境を整えるのが手術の目的だからです。

とくに筋まで痩せて重症となっている場合には親指の機能回復は一般には困難なことが多く、ボタンの掛け外しが思うようにいかないなどの場合には、初期の段階までに手術を受けておくことをお勧めします。