~ 関節手術で生活の質を向上!~

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 加齢による変形性膝関節症の重症例や、進行した関節リウマチによる膝関節障害などに行われるのが人工膝関節置換術です。手術とリハビリテーションによって、痛みが劇的に改善し、日常生活のみならず、散歩、旅行などを楽しめるようになり、生活の質の向上も期待できます。

 膝関節は、大腿骨と脛骨と膝蓋骨からなる関節ですが、それぞれが対応する部分には、関節軟骨とよばれるクッションの役割をはたす柔らかい骨(軟骨)があります。この軟骨は加齢とともに次第にすり減っていきます。また関節リウマチなど関節に炎症を生じる疾患でも薬物療法などがうまくいかないと同様に軟骨が減少していきます。これらに対しては、内服薬、注射、リハビリ、装具などである症状の緩和が期待できますが、病状が進めば対処困難となっていきます。

 変形性膝関節症の進行度を示しますが、第3段階、あるいは第4段階においては、人工関節置換術による治療が勧められる状態と言えます。人工膝関節置換術とは、痛んだ膝関節部の骨・軟骨の代わりに、丈夫な金属、ポリエチレン製のインプラントを挿入し、新たな膝関節を形成する手術です。この手術を行うための器具は特殊なものですが年々改良、洗練され、またインプラント自体の品質も向上し、安全にかつ確実に痛みをとることのできる手術の1つである証拠として、手術件数が年々増加しており、近年では全国で年間10万件以上の手術が行われています。当院でも2年前に比べると3-4倍の手術件数となっています。それでも日本ではまだ手術に対する不安、痛みを我慢する国民性などがあるため、手術を受ける人は人口比では欧米の10分の1程度と言われています。

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 しかしながら、変形の程度と痛み・歩行障害の程度とは必ずしも一致しない場合もあります。変形の程度のほか、罹病期間、年齢、仕事、スポーツ・生活習慣、膝の可動性等をもとに、のちに記述するデメリットも十分考慮して総合的に判断し手術すべきかどうか決定します。
 デメリットとしては、一つには、人工関節は機械ゆえ、それ自体耐用年数があることです。一般的には15年と言われていますが、転倒などのケガ、重労働などの過負荷によっては挿入したインプラントが破損したり、緩んだりすることがあります。したがって、激しいスポーツ、重労働は避ける必要があります。また、膝関節の可動域、屈伸には限界があるということです。正座やしゃがみ込みはできなくなるのが普通です。したがって、手術後も洋式の生活、バリアフリーでの生活の方が望ましいと思われます。
写真4 手術とその後の経過ですが、手術・リハビリを含めて約3-4週間程度の入院と、退院後の自宅での1-2カ月程度のリハビリテーションによって、人工関節が自分の膝らしくなっていくと言われています。その後も重労働等むりなことさえしなければ、10年以上にわたって痛みなくしっかりした膝で生活できるようになる非常に画期的な手術だと考えます。
 但し、この手術が該当するかどうかをしっかり吟味する必要があります。痛み即人工膝関節置換術でもなく、また変形即人工膝関節置換術でもありません。しっかりとした検査、診察を行い外来で経過観察を行ったうえで、また人工膝関節の特徴をよく理解したうえで、手術を受けることをお勧めしております。

医師のご紹介

写真2  整形外科(膝関節) 豊島定美 医師

  所属学会・受賞歴

 ●日本整形外科学会 専門医
 ●日本人工関節学会 認定医
 ●日本体育協会公認 スポーツドクター